会計・生産・営業・IT・人材強化それぞれの専門家が融合し、経営課題の解決を企画立案から実行定着まで幅広く支援。

サスティナビリティ ENGLISH

セミナー一覧seminar&news

【WEBセミナー】老舗企業 X アジャイル経営管理(Atstream Xross Talk)

弊社主催のWEBセミナー『老舗企業 X アジャイル経営管理(Atstream Xross Talk) 』にご参加いただきありがとうございました。
145名様にご参加頂き、皆様からの質問にお答えするクロストークも時間を延長するなど、大盛況のうちに終了いたしました。これもひとえに参加いただきました皆様方のおかげと心より御礼申し上げます。
ご登壇後に、アジャイル経営管理について、滝順子様よりご寄稿いただきましたのでご紹介いたします。


 今からお話しする私のある企業での3 年間の経験は、意図してアジャイル経営に挑戦し、成功したベストプラクティスというわけではありません。ただし、日本企業でアジャイル経営を、会社の仕組みにまで確立した事例は、まだ多くないと思います。そこで、私の経験を、経営トップの果たした役割と、私のチームの仕事の進め方の2 点からご紹介したいと思います。
 その企業は、住江織物という135 年の歴史を持つ関西の老舗企業で、一般家庭やホテルなどのインテリア、自動車・鉄道の内装など、3つの事業セグメントを持つ連結売上高900 億円の中堅上場企業です。私は転職して半年後に、グローバルプロジェクト室という部署の部⾧となりました。たった3 人のとても小さいチームですが、終身雇用を大前提とするこの会社にとって、外部から来た女性を半年後に部⾧にするのは画期的なことだったと思います。なぜこんな部署が新設されたのでしょうか。

 その背景には、多国籍に展開する子会社に対し、企業ガバナンスを高度化したいという、社⾧の思いがあったと考えています。この会社は、事業本部の独立性を重視した経営体制で、製品の技術革新が少ない成熟市場であることもあり、業務改革や人材流動化にも保守的な社風であると思います。
 そのような環境下で、社⾧自らが、一人の異質な人間にポジションを与えて、自由に何かをやらせようとしたということ。それが、のちの私のアジャイル型の仕事を生んだ、経営トップの果たした役割といえると考えています。日常業務から解放されることで自律的に活動する余地が私に与えられており、かつ部⾧としてそれなりの裁量権を持っていたことは、アジャイル型のアプローチが自然発生した大きなポイントです。そして、そのような環境を私に与えたのが社⾧であると皆が知っていたことも、新しい仕事の進め方が許容されるベースとなりました。また、社⾧が私に何をやらせたいのかという大きな意図を、採用時の面接を通じて私が共有していたという点も、重要なポイントだったと思います。

 それではプロジェクト部⾧として、私が手探りでやり始めた仕事の進め方についてご紹介しましょう。
 既存の組織やルール、業務から解放された出島のような存在だったというのが、この部署の大きな特色です。私は、自分の会社に対する知識もほとんどない状態で、外部目線で必要だと思った取り組みを、経営会議に提案書を提出しては、一つずつやり始めました。結果として、大規模プロジェクトのように、最初に構想を描いてロードマップに従って進捗させていく姿ではなく、小さいジョブ型のスタイルになっていきました。このジョブ型、というところと、自律的にやっていた、というところが、従来型の仕事の進め方とは大きく異なる大きなポイントだと考えています。特に、グループ経営管理システムの導入は、システムとオペレーションが連携してジョブ型で進むスタイルの端緒になりました。

 同社は、自動車関連事業を中核事業としているため多国籍に展開しておりますが、経理リソースが十分配置できていない拠点もあり、また、歴史ある企業によくあるように、連結情報のシステム収集や月次管理連結の導入も遅れていました。そこで、まず制度連結用のシステムを刷新し、続いて月次管理連結の導入で管理会計制度の高度化を行う内容の提案書を提出し、着手しました。
 オラクルの管理会計ツールは、2 か月の現状分析期間のあと、アットストリーム社にご参画頂いて実装をはじめ、約5 か月後にはテストランを実施しました。スモールスタートで、現場の習熟も睨みながら徐々にレポート数を増やし、最終形を目指す予定でしたので、そのタイミングから一部のレポートについては経営会議提出を開始しました。しかし、その直後、コロナの発生で、海外工場が軒並み操業停止に近い状態になってしまいます。実務が大混乱していたため、経営レポートのステップアップはいったんペンディングとなりました。残念ではありましたが、その間に、国内事業の事業本部⾧から要請された管理数値の精緻化を行うことになりました。
 その調査のため、販売子会社の各営業拠点の責任者や、製品企画、購買等の部⾧クラスに軒並みインタビューをお願いし、現場の状況を教えてもらいました。その結果、既存資料では提供されていなかった事業単位の情報を経営管理レポートに盛り込むことが出来ました。また、営業や製造の多数の責任者からの情報と、新たに可視化された財務数値の分析を通じて得た私の見解は、新しい事業戦略の採用と原価管理プロセスの提言書として、後日経営会議に提出しました。この提言書は経営陣に実際にご検討頂き、工場及び販売子会社と連携する2つのワーキンググループに発展していきました。このように、経営と、オペレーションを担うチーム、そしてシステムが連携しながら、小さなジョブが積み重なっていったことになります。

 みなさんの中には、DX 推進や社内イノベーション創発の責任者の方、事業環境自体が流動的な企業の方もいらっしゃると思います。そのような不確実な環境や目標に対して、ゴールポイントを短く、小さいジョブ単位で方向性を修正しながら進んでいけば、すこしずつ成果を確保していけるかもしれません。そしてまた、裁量権の中でチームが自由に考え、行動することで、新しい発想とスピード感をもって業務が推進されるのだと思います。Plan Do See のPlan 自体も自分で考えて変えていくことになりますので、その柔軟性が自己変革を促すわけです。
 アジャイル経営を企業レベルに仕組み化し、定着させるには、トップダウンの命令では難しく、自律的 に、スピード感をもって仕事をする方が楽しいと思う従業員やチームが、組織内で増殖していくことで、細胞が入れ替わっていくように変革が進むのではないかと思います。一方で、小さいチームでもやり始めることが出来るとすると、アジャイル経営は⾧年の社風がしっかりと存在する老舗企業でも、トライできるのではないかと思います。
 そのためには、まずは小さいチームからでよいので、自由なやり方を実行する人達に裁量権を与え、経営サイドが保護する、それが非常に重要であると思います。もちろん、そのチームが的外れな方向に走っていかないように、経営サイドとチームが方向性を共有しておくこと、アジャイル型のジョブの成果や人事評価の在り方を検討することも重要です。ただし、日本企業ではアジャイル経営について権限付与や業績評価まで仕組み化出来ている企業は少なく、今後の課題だと思います。

文:滝 順子(滝公認会計士事務所)
【プロフィール】
神戸大学大学院 経営学修士(MBA)、公認会計士、公認内部監査人(CIA)、監査法人での20年の勤続期間のうち、10年以上を会計アドバイザリーやIPOチームで従事し、内部統制や管理会計など、経営管理体制の構築や企業ガバナンスに関する知見が豊富。監査法人特有の、会計に特化したコンサルティングを⾧く経験し、幾多のプロジェクトをマネジメントした経験を有する。監査法人退職後、一部上場企業に転出し、創業135年の老舗企業で初の女性部⾧に登用され、グループ横断的な経営課題に関する現状分析と施策を経営会議に提言する職に従事。2021年滝公認会計士事務所を開設。

【セミナープログラム】

4月8日(木)
15:00 – 16:00

    『老舗企業 X アジャイル経営管理』Atstream Xross Talk   

創業135年の歴史を持つ関西老舗企業における、『グローバル経営管理体制の構築に向けたアジャイル型の取り組み』を お客様および外部のコンサルタントの2者の視点から対談形式で紹介します。

『経営情報の可視化による、経営管理の側面からの活動改善・効果創出までの取り組み』と、『プロジェクト部⾧の苦悩と挑戦の積み重ね』を一挙公開!

【Webinar Guest Speaker】
滝 順子(たき じゅんこ)
滝公認会計士事務所
元 住江織物株式会社 グローバルプロジェクト室部⾧

【Interviewer】
西村 直(にしむら すなお)
アットストリームコンサルティング株式会社  ディレクター

【Moderator】
兵頭 卓(ひょうどう すぐる)
アットストリームコンサルティング株式会社 マネジャー

【開催要綱】

タイトル 『老舗企業 X アジャイル経営管理』Atstream Xross Talk
日時 2021年04月08日(木) 15:00 – 16:00
参加費 無料(要事前申込)
会場 オンライン(Zoom)
※ Zoom URLは、お申し込みサイトからお申し込みいただいた方へのみご案内させていただきます。
対象(こんな方におすすめ) ■ トップダウンでの経営管理改革の取り組みに限界を感じられている方

■ 経営管理領域のDX(デジタル・トランスフォーメーション)等のプロジェクト推進を担われている方

■ 経営管理改革による効果創出までの推進方法を模索されている方
主催 アットストリームグループ
申込ページ 本WEBセミナーは終了いたしました。
https://atstream.seminar-manager.com/xrosstalk/event

【講演者紹介】

【Webinar Guest Speaker】 滝 順子(たき じゅんこ)
滝公認会計士事務所
元 住江織物株式会社 グローバルプロジェクト室部⾧

監査法人での20年の勤続期間のうち、10年以上を会計・IPOアドバイザリーに従事し、内部統制や管理会計など経営管理体制の構築や企業ガバナンスに関する知見が豊富。その後、創業135年の老舗企業で初の女性部⾧に登用、グループ横断的な経営課題に関する現状分析と施策を経営会議に提言。2021年、滝公認会計士事務所を開業。
公認会計士、公認内部監査人(CIA)、神戸大学大学院 経営学修士(MBA)。


【Interviewer】 西村 直(にしむら すなお)
アットストリームコンサルティング株式会社
ディレクター

アビームコンサルティングを経て、現職。
主にグローバル経営管理DXの推進と制度の構築、会計システムやBIシステム等の構想策定・設計・分析手法立案・定着化の支援を専門としている。 当プロジェクトにおいては経営情報の可視化、管理会計制度・システムの導入・定着の推進を支援。


【Moderator】兵頭 卓(ひょうどう すぐる)
アットストリームコンサルティング株式会社
マネジャー

フューチャーアーキテクト株式会社、PwCあらた有限責任監査法人を経て、現職。
主にCRM改革、セールス・サービス領域における業務改革、情報システム化企画の立案・導入・定着化の支援を専門としている。

セミナー一覧