モノづくりスクール第14回SCMにおける物流は宝の山である

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第14回 「SCMにおける物流は宝の山である」株式会社アットストリーム 杉本 哲司

 製造現場でのコスト削減活動が一通り実行されてくるにつれ、次の収益性改善のターゲットとして物流が注目を集めることとなった。確かにそれまで“ノーマーク”だった状態からすると、一定のコスト改善効果が得られたことも多い一方で、挫折感を味わうことになった企業も多いのではないか。
成功事例として紹介されているような活動も、内情を伺うと「実は思っていた程には効果が出ていない」という話を聞くことも少なくない。そのような事例では、姿かたちは変わったもののその改善効果をおカネとして刈取ることができていなかったり、サービス水準などコスト以外の問題が想定した以上に甚大で運用が一部分に留まっていたりということが多いようだ。
なぜ宝の山から黄金のマスクを掘り当てることができないのか。

1.物流とは何か?

 物流、ロジスティクス、SCMと微妙に似て非なる概念があるが、概ね図1のように違いを表すことができる。物流は一番狭い意味で使われることが多く、生産物の物理的な流通に焦点を当てサービス水準とコストの均衡を図ることを主な目的としている。したがって物流管理ではコストの決定要因となる諸要素をパラメーターとし、その結果として得られる物流の5大機能におけるサービス水準とコストとの釣合いを問題にする。決して単なるコスト削減だけをひたすら追求することが目的ではない。

 一方、ロジスティクスではビジネスプロセスにおける物流機能に、またSCMでは経営資源におけるモノという側面に焦点を当てた捉え方といえる。


【(図1)物流、ロジスティクス、SCMの関連】

(図1)物流、ロジスティクス、SCMの関連

2.机上と現場のギャップ

 物流改善で最も重要なのは何と言っても地道で継続的な日々の改善活動である。これを疎かにしているようでは決して宝の山に行きつくことはない。製造業では生産現場の改善活動には相当の労力をかけて、組織的・継続的にコスト改善、品質改善、5Sなどの取組みを実施してきている。それに比べて物流の改善活動にはかなり開きがあるのではないか。当スクール第9回にあるような日々のデータ把握とバラツキの評価・分析と同様のことが、積載率、遅延率、緊急対応費用などの物流指標でも行われていれば、机上の計算と現場での実態のギャップによるバラツキを一定の枠内に収束させることができるはずだ。そのバラツキの大きさによるリスクを考慮して物流コストが設定されていることが多いのだ。

 ではなぜ物流ではそのような管理ができていないのか。

 図2のように多くの企業では物流機能を関連会社や外部の物流会社に委託している。そのため、物流管理で問題とするサービス水準と物流コストの関係が分かりづらくなっている。クライアントの多くから耳にするのが「今の物流コストが適正なのか判断できない」という声である。「配送料無料」というサービスに代表されるように、物流サービスを提供する側はコストをブラックボックスに入れてしまうことでその中身を見えづらくすることができるのだ。


【(図2)製造業における物流のパターンによる違い】

(図2)製造業における物流のパターンによる違い



 したがって、まず物流コストの決定要因における自社の事業特性、製品特性を明らかにし、それに基づく物流コストテーブルおよびそれを評価する各物流機能のサービス水準を物流会社と合意すること。そのうえで、日々のサービス水準のバラツキを自社責任と物流会社責任別に把握し、分析・評価した結果を物流会社との交渉に活用することが重要となる。つまり、物流の付加価値としての改善効果を刈取る道筋をつけた上で日々の継続的改善活動を行うということだ。

3.物流効率だけでは解決できない

 生産現場の改善活動は、工場内で完結し後工程部門や社外などを巻き込まずにできる場合が少なくない。物流改善は物の流れを扱うため発送元、配送者、配送先という関係者が密接に影響を受けることが避けられず、それぞれが独自に自部署の効率性のみを追求し主張するだけでは問題解決にはならない。ビジネスプロセス上に複数存在している諸機能を通じて滞りなく生産物を通過させることができなければ全体のパフォーマンスを最適化できないのだ。例えば全体のスループット最大化のためにはバッファとしての中間在庫を増やすこともあり得るが、中間在庫管理部署の物流効率だけをみるとベストパフォーマンスにはなり得ないことになる。このことは、頭では理解していたとしても実行しようとするとかなり困難なことが分かる。

 全体最適とは全員が少しずつ痛みを引き受けることにより全体の成績を上げることだといえるが、自然のままにまかせていると各部署では自部署の存在意義を示そうとその最大能力を発揮しようとする。

 したがって、各部署のパフォーマンスをどのような評価指標(KPI)で評価するかが非常に重要となるのだが、例えば在庫回転と納期遵守、納入頻度とCO2排出量など指標の組合せによる総合判断基準や定期的な指標の見直し、機能間の相互チェックなどが有効である。

4.どこまで本気かが問われている

 また関係部署つまり複数のステークホルダーの利害関係を調整し痛みを引き受けてもらうためには、並列関係にあるステークホルダー達に対してトップダウンの力を活用した上で、特定の部署が活動全体を推進するリーダーシップを発揮しなければならない。

 物流部門が社内の花形部署であるという企業はそう多くはないだろう。問題なく物を届けて当たり前(褒められない)、一方何か問題が起きると責任を追求され即時対応を厳しく要求される。そのためリスクをヘッジしようとする組織体質となる反面、他部門には理解されなくても自分の領域では確固たる成果を上げているという自負もある。場合によっては企業グループ内の雇用の受け皿として、物流会社との中間に位置して右から左へ情報を受け流しているだけの場合もある。要するに物流部門はその存在意義を示しづらいため社内での地位が低く他部門からの理解も得られにくい組織構造になっているといえる。

 最近では日本企業でもCLO(Chief Logistics Officer)を置くことが珍しくない。単なる物流改善を越えたプロセス/事業構造改革による物流効率最適化のために必要充分な役割、責任、権限、人材を物流/ロジスティクス部門に配置し、あるいは情報システム機能や物流拠点の再編への投資などの経営判断を行うかどうか。企業の物流/ロジスティクス改革への姿勢、つまりどれくらい本気かどうかが宝の山の大きさを左右するといえる。



 

杉本哲司 (Tetsuji Sugimoto)
飲料メーカーで物流・ロジスティクス業務とマネジメントを経験した後、 プライスウォーターハウス・コンサルタント梶AIBMビジネスコンサルティングサービス にてSCM戦略の立案、サプライチェーン改革の構想策定、プロセス設計・導入、 購買業務改革などに従事。 潟Aットストリームに参画後、主に製造業のSCM改革、生産性向上支援などを担当。

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