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第9回 「ベスト・ワースト法で課題を発見しよう」株式会社アットストリーム 杉原健史

前回の当スクールでは、「戦略マップ」によって工場の向かうべき方針を明らかにし、全従業員と改善・改革活動のベクトルを合わせる手法についてご説明しました。
今回は全体共有がなされた方針のもと、改善・改革を推進していく手法についてご説明いたします。

1.ベスト・ワースト法で課題を発見する

毎日の生産では、一見同じことが繰り返され、今日も昨日の延長だとの感覚に陥りがちです。
しかし、不良率データを見ると昨日と今日では数値に倍以上の開きがあったりします。
このように、実績データの精査を試みることが課題の発見の第一歩ですが、一般的には、合計値や平均値だけで物事を判断しているケースが多く見られます。

<図1 平均値では見えないものづくりの事実>

<図1 平均値では見えないものづくりの事実>

図1は某社の3つの希少資源データ(稼働率、能率、歩留)です。
例えば、この表の一番上の製品(ABC1234)に着目してみると、10日間の生産実績で、
3つの希少資源は

  • 稼働率は85.1%
  • 能率は1.10
  • 歩留は96.6%(不良率は3.4%)

この製品を全製品平均と比較すると、稼働率は平均(69.3%)より高く、1分あたりの生産数は平均(1.15)より低く、歩留は平均(96.8%)とほぼ同じです。
そのため、この製品は、1分あたりの生産数量が低いことが問題だと経営者には認識されています。
そこで、次に目線を現場レベルへ持っていき、実態に迫ってみます。

<図2 日別データをベスト・ワーストで見る>

<図2 日別データをベスト・ワーストで見る>


図2は、図1の製品別データの中からABC1234の日別生産実績を取り出したものです。
日別データで問題を見てみると、日別では実績がばらついていることが分かります。

  • 稼働率は66.7%から97.5%の間であり、その平均値が85.1%である。
  • 能率は0.80から1.91の間であり、その平均値が1.10である。
  • 歩留率は93.0%から98.4%の間であり、その平均値が96.6%である。

これほど日々の生産実績に変化があるということは、仮に3つの希少資源データが、最も良い稼働率で、最も良い1分当たりの生産数量が達成でき、歩留が最も良い結果になるとすると、現在よりもどれくらい経営成果に貢献するのでしょうか。

総合効率=(時間)稼働率×能率(速度)×歩留で比較すると、
  • 平均データの場合、総合効率は0.851×1.10×0.968=0.91
  • 各項目ベストデータの場合、総合効率は0.975×1.91×0.984=1.83
  • 各項目ワーストデータの場合、総合効率は0.667×0.80×0.93=0.50

となります。つまり、平均の総合効率0.91と比較すると、ベストの場合は2.01倍にもなるのです。
同じ固定費をかけて、2倍の総合効率で生産できるということは、製造された製品が半分の製造費で出来るということです。
半分の製造費で出来るのなら、もともと製造設備や人員が半分で良いという考えになりますし、今後の設備投資が半分で済む可能性もあります。
同じ設備を使って、同じ業界で競争しながら、ある会社は儲かり、別の会社は赤字が続いて存続が危うくなる説明の拠り所にもなるのです。
多くの場合、経営トップには平均値のデータしか届かないでしょう。また、企画部門も平均値で経営計画や設備計画を立てています。
しかし、バラツキを取り込んだベスト・ワーストの現場データで切ると多くのムダが見えてくるのです。


2.ベスト・ワースト法で課題を解決する

ベスト・ワースト法を活用した課題発見による改善(=課題解決)の最も基本的は使い方を図3に示しておきます。

<図3 ベスト・ワースト法による改善活動の進め方>

<図3 ベスト・ワースト法による改善活動の進め方>

箇条書きで簡単にまとめると以下の通りです。

  • (通常は)月次のデータからベスト10とワースト10を抽出する。
  • ベストデータとワーストデータに何故違いがあるのか、現場の実態を調べながら差異の中から課題と問題解決の切り口を見つける。
  • ワースト10を徹底的に分析し、改善する。

ここまでベストとワーストのデータを分析してきましたが、バラツキが大きければ即ち改善の余地も大きいということが実感いただけたと思います。

さらに具体的な例をあげてみます。
多くの工場は、いくつかの班を編成した上で交代制の稼動をしており、実際のデータから班別の違いに着目すると様々な発見があります。


  • 班長のリーダーシップと現場管理能力
  • メンバーの運転技術などの管理技術
  • 人材の層の厚さ
  • 班ごとに異なる作業方法

このように班別に分析を行うと、毎日の生産データには大きなバラツキがあるため、ベスト・ワーストのデータも異なり、更に改善の余地があることが分かってきます。
大きなバラツキのある班・職場ほど、今まで改善をしてこなかった証拠であり、このような場合には合理的で納得のできる目標設定が重要となってきます。
つまり、過去の実績から納得するデータを示し、高い目標に向かって走り出す後押しが必要なのです。

以上、今回はベスト・ワースト法に基づいた、現場における課題の発見ならびに解決についてお話しました。
次回は、本稿最後に述べました「高い目標の設定とその達成へ向けた推進手法」を説明していきます。

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