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掲載記事紹介

経営幹部が考えるべき営業組織の改革 儲ける営業組織への変革 KPIマネジメント

寄稿先:
営業専門ビジネス誌 [ダイヤモンド・ビジョナリー2009年7月号別ウィンドウが開きます](5月25日発売号)
発行・販売元:
株式会社ダイヤモンド社別ウィンドウが開きます
著者:
アットストリーム プリンシパル 加納由紀子 / ディレクター 大工舎宏

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T.経営幹部が営業組織をマネジメントするための重要手法 KPIマネジメント

営業の世界には100%の方程式はない

これまで営業を経験された方ならおわかりだと思いますが、営業の世界で「こうすれば100%売れる」、「必ず目標を達成できる」という方程式はありません。

常連のお客さまから「次も頼むよ」と口頭で依頼を受けていても、実際の受注のタイミングで担当者が変わったり、競合が攻めてきたりすることで失注することもあるでしょ う。 まったく見込みがなかった顧客から、突然注文をいただくこともあるでしょう。 予算達成に向けて、さまざまな手を打ち、営業活動を行なっても、100%達成することはとても難しいことです。

一方で、企業における営業の役割は製品やサービスを予算通り売る切ることです。この現実に対し、経営幹部や営業マネジャーはどのような手を打てばいいのでしょうか。

私は、100%の方程式がないからこそ、余計に、「どのように行動すれば、より勝率が上がるのか」を常に模索する必要があるのだと思います。 100%の方程式があったとしたら、営業の世界も資本力の勝負となります。より多くの人材を投入し、方程式通りの活動をすればいいのです。
しかし、100%の方程式がないから、試行錯誤しながら、自社にとってどうすることが勝率アップにつながるのかを考えなければならないのです。
現場の営業パーソンのモチベーションや営業スキルを上げることも重要ですが、ここでは、経営幹部や営業マネジャーが営業活動を把握し、指示を出すための数値管理に絞ってその手法をお伝えしたいと思います。

 
トップから現場担当者までの共通言語を作るKPIマネジメント

経営幹部や営業マネジャーが現場を理解する上で共通言語になるのが、数値です。

「彼は頑張っている」ということは、どのようにして判断するのでしょうか。
社会や企業においては、頑張っていることを数値で示さなければなりません。
売上高や粗利などズバリの業績数値の場合もあるでしょうし、訪問件数や顧客情報の入力件数などのように営業パーソンの行動を数値で把握することもあります。いずれも数値による管理です。

このように単に結果を数値で管理するだけでなく、営業の成果を上げるためのプロセス(過程)も管理することを含めて、ここではKPIマネジメントとしています。

結果・成果に対しての数値管理よりも、むしろ、成果を上げるための「プロセス」の管理のために数値・指標を活用するべきだと考えます。

 
営業プロセスを細分化し、営業担当者の行動特性を数値で知る

では、ここである営業組織の行動に関して、分析をしてみましょう。

【表1】のデータをご覧ください。
営業組織の営業パーソンの行動を数値で比較したものです。

(1)は、年次のパフォーマンスを確認するために、営業組織において1人当たりの訪問件数や獲得件数、金額などを比較したものです。 訪問件数は各自の日報から件数を把握し、獲得件数や売上高、粗利高は実績データからピックアップし、一カ月の数値を営業人数、営業日数で割って、平均を出しました。

こちらを確認していただくと、訪問件数については、前年度は営業1人当たり3.13件であったものが、2.25件と7割程度に落ちていることがわかります。 また、訪問に対する獲得率も低下が見られます。 前年度と比較して、営業パーソンの行動力が落ちていることは明らかです。 それに伴い、売上高も落ちているのですが、粗利率は若干プラスとなっています。

【表1】営業1人当たりパフォーマンス比較

【表1】営業1人当たりパフォーマンス比較

さて、皆さんであれば、このような場合、どのような対策を行なうでしょうか。

「訪問件数を増やせ」という指示も一つの答えではありますが、現場の営業パーソンも、成績を上げるために個々のできる範囲で訪問頻度を上げる努力はしているはずです。
我われは、ヒントを得るために、トップクラスの売上を確保している営業パーソンについても、同じデータを作成しました。

2人のデータと平均値を比較すると、訪問件数や獲得件数が多いことは明らかです。
Aさんについては、獲得率も高く、また、粗利率も高いことがわかります。その事実を確認した上で、その理由をAさんに尋ねてみました。

Aさんからは、
(この企業の場合は、新規顧客を対象としたBtoBの営業をしており、営業とは別にアポイント専任者が存在)
自分が取っていないアポイントについては、訪問前にアポイントを取った人に会話の詳細を確認しておく
ほかの人に取ってもらったものだけでなく、自分自身でアポイントを極力取るようにする。
そのほうが自分自身のスキルアップになる
顧客に合わせた提案営業を行なう
顧客と仲良くなって、自分を売り込む
という答えが返ってきました。

この情報から、営業マネジャーは強化すべき営業方針を経営幹部に伝えることができます。

例えば、
訪問件数を上げるために営業パーソンが自らアポイントを取る時間を増やす
Aさんが特に重視している要素を参考に、アポイント専任者のアポイント時の情報入力シートを作り、営業と共有する
アポイント時のシートの記載項目と提案内容を照らし合わせ、提案をパターン化し、パンフレットを作成する
など、具体的な改善策を挙げ、それにより、効果が出たかどうかを翌月以降、同じ指標で確認していきます。
前述の通り、営業に100%はないので、必ずしもAさんのやり方で全員が効果が出るわけではありません。

しかし、「数値で実態を把握する」→「改善策を検討し、手を打つ」→「数値で効果を確認する」を繰り返していくことで、効果が出たこと、出なかったことを一つ一つ整理していくことができます。
具体的な改善策や活動をKPI・活動目標として設定することで目標達成に寄与すると想定される重要な活動・行動をマネジメントすることができるようになります。

このことが「成果を上げるためにプロセス(過程)を管理する」ということであり、KPI活用の最重要ポイントです【図1】

【図1】チーム営業のベースとなる方法論−KPI マネジメント−

【図1】チーム営業のベースとなる方法論−KPI マネジメント−

皆さまの会社において、「プロセス指標」にまで踏み込んだ行動や目標の設定は共有されているでしょうか。
成果を高めるための重要成功要因や重要業務・重要施策は特定されているでしょうか。
営業マネジャーからの報告が業績数値のみで、具体的な対策が不十分であると感じられる経営幹部の方がおられましたら、過去の実績や成功事例などの分析、高業績者の分析などを行ない、プロセス指標の仮説設定を実施することをお勧めします。
仮説レベルで設定を行ない、実績・成果と照らし合わせながらプロセス指標を見直し・進化させていくという進め方も有効です。

プロセス指標を設定することは現場の営業パーソンが強化すべき活動・行動が明示・定量化されるため、組織・メンバーの実行においても納得性が高く、行動しやすい業務目標して受け入れられます。
(これら営業改革の実行段階における活用については、本稿の後半で改めて整理いたします)

経営幹部はプロセス指標の特定が不十分な場合は、その設定のための活動の推進を指示する
営業マネジャーは現場の状況を踏まえながらプロセス指標を特定し、対策を立案・実行し、結果を確認して経営幹部に伝える
経営幹部は、営業マネジャーから結果数字だけを確認するのではなく、要因分析と対策を確認、不足を指摘、改善指示を行なう
以上のような活動が行なわれることが営業組織の目指すべき姿です。
成果・結果の数値は、なんらかの活動や施策(アクション)が変わらない限り変化しません。
いつもと違うアクションをしてみて、それが数値にどのように反映されたのか、または反映されなかったのかを適時確認していきながら、数値の変化と営業のアクションを結び付けていくというような「営業のマネジメントサイクル」を構築・進化させていくことを組織として検討していく必要があると考えます。

次に、営業の予算統制におけるマネジメントのあり方を見ていきましょう。

 
引き算と足し算で数値を管理する

営業における予算統制において、もっとも重要なことは、業績の予測を行ない、早めに手を打つことです

現場の営業パーソンの立場では、自分がもっている案件については、なるべく受注確度が上がったタイミングで報告したい、あるいは、失注になりそうな案件については極力決まってから報告したい、ということは心情として非常に理解できることです。
しかし、この状態で予算を管理した場合、経営幹部や営業マネジャーは月末や期末の最後の最後で、不足する額に気付かされることになるのです。 それでは手の打ちようがありません。

営業マネジャーは、営業パーソンから早いタイミングで各案件の進捗状況を確認しなければなりません。 そのタイミングは、各企業の営業特性によって変わります。
日々で売上が上がる製品・サービスを販売しているのであれば、週単位で案件ごとの進捗確認を行ない、売上の進捗状況を確認しながら、月次の目標を達成するように予算を管理することが必要でしょう。

一方、初期発掘から提案、受注までに長い時間がかかるような営業特性の場合は、週単位で状況が変わることはないので、週次の進捗確認は必要ないかもしれませんが、予定通り売上が上がらなかった場合のリカバリーは、短期では対応できません。

ここでは、初期訪問から受注確定まで数カ月〜半年程度を要する案件を抱える企業の例を見ていきましょう【表2】

【表2】

【表2】

この企業では、案件化の期間が長いため、期初に顧客別案件別の売上と粗利の計画をすべて積み上げます。(=案件の足し算)すでに交渉を行なっている案件は顧客名と案件名、受注・売上時期と金額を明記し、残り新規分については、新規として記載します。ただし、新規においても、予定する時期や金額は特定して記載しておきます。
月次の予算統制会議においては、個別案件について、当初の予定からの変更を伝えます。

例えば、「受注が二ヵ月ずれそうなので、11月から1月に変更しました」とか、「受注見込みの確度がAからBに落ちました」ということを帳票に記載します(ここでは、受注確定から入金までの期間が長いため、受注と確定= 売上をそれぞれ記載するようにしています)。
すると、当初の予定からその分の金額が減ってきます(= 案件の引き算)ここで減った金額に対する対策を「補填」欄に記載します。不足分を明確にして、同程度の案件を準備せよ、ということです。

月次の会議においては、案件の足の長さから当月の予算を確認するのではなく、四半期先、半期先の予定まで見通します。
営業マネジャーは担当者に対して、毎月その案件の状況を判断させ、変化があれば早めに帳票に変更を反映させるよう指示します。早めに見極めさせる癖をつけ、追加の行動を促すのです。お客さまの所に通い詰める努力の営業も必要ですが、営業パーソンの一人一人の限られた時間をいかに効率的、効果的に使わせるかも営業マネジャーの役割です。

経営幹部はそれぞれの部署単位で営業マネジャーが管理する帳票が月次で更新された箇所を確認し、マネジメントが適正に行なわれているかどうかを確認すればいいのです。
また、案件獲得のための個々の営業パーソンの行動については、案件のアクション・プランについて計画と実施を確認するシート【表3】を作成させ、その達成状況をチェックし ていくことで営業担当者の行動と実績を管理していくことができます。

【表3】

【表3】

今回の事例は営業活動の数値化にこだわり、営業マネジャーがどのように業績向上に向けた実態把握と改善施策を実施すべきか、経営幹部は営業マネジャーの行動をどのように 管理すべきかを確認してきました。
企業によって、見るべき指標は異なります。指標は闇雲に設定・分析をするのではなく、どのようなプロセス・活動が成果につながっているのかを考えた上で設定する必要があります。

次に、前半で述べたKPIの活用を含めて営業改革の実行段階において経営幹部が考えるべき営業マネジメントについて述べていきます。

>> 次ページ: U.営業改革の実行段階において経営幹部は営業マネジャーにどのような働きかけをするべきか

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